がん臨床試験では、治療による有害事象の評価が重要ですが、試験開始時点(ベースライン)で患者が既に有する症状が評価に影響を及ぼすことがあります。骨転移患者を対象にした試験では、特にこの点に注意が必要です。
Atkinsonらは、臨床医の評価において試験後の症状悪化が過大評価される可能性があることを示しました[1]。ベースラインを考慮せずに有害事象を評価すると、治療の影響ではなく、既存の症状が新たな有害事象と誤認される可能性があるわけです。厚生労働省科学研究事業で作成された「患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome [PRO])使用についてのガイダンス集」では、Patient-Reported Outcomes version of the Common Terminology Criteria for Adverse Events(PRO-CTCAE)を用いて、ベースラインとフォローアップ時に患者自身が症状評価を行う方法が紹介されています[2]。
1. JAMA Oncol. 2020:6: e195566.
2. https://www.lifescience.co.jp/pro/article04-2.html