患者さんとご家族へ
骨転移を有する患者さんが痛みのない生活を過ごすために

JCOG2211試験
研究代表者 中村 直樹
JCOG2211研究代表者を務めます聖マリアンナ医科大学 放射線治療科の中村直樹と申します。
がんに対する治療では、がんを治すためやがんの進行を抑えるための治療と同時並行してがんの症状に対する治療を行う必要があります。放射線治療はがんによる痛みを解消するための強力なツールです。
JCOG2211では2種類の照射方法のどちらが痛みを抑える効果において優れているかを調べています。どちらの照射方法を受けるかを患者さんに選んでいただくことはできませんが、どちらの照射方法を受けることになったとしても、JCOG放射線治療グループが一丸となってそれぞれの照射方法における最高品質の放射線治療を提供することをお約束します。
骨転移を有する患者さんが痛みのない生活を過ごすために。JCOG2211へご理解とご協力をお願いいたします。
全ての努力はより良い医療のために

JCOG2211試験
研究事務局 伊藤 慶
ホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。JCOG2211という臨床試験において研究事務局を担当しております、伊藤慶と申します。
本試験では、背骨に転移したがんによる痛みを軽減するため、2つの治療法を比較しています。一つは、広い範囲に穏やかな照射を行う方法、もう一つは、狭い範囲に高い線量を集中して照射する方法です。どちらも優れた治療法ですが、どちらがより効果的かを明らかにすることが、この試験の目的です。
医学の進歩には、臨床試験による治療効果の検証が欠かせません。患者さんからいただく協力が、次の治療法の発展に繋がります。実際に患者さんから『人のためになるなら』という言葉をいただくたびに、その気持ちに心を打たれます。皆様の貴重なご協力が、未来の医学に大きく貢献していることを実感しています。患者さん一人ひとりにより良い医療を提供できるよう、私たち研究事務局はこれからも誠心誠意努めてまいります。
皆さまのご協力に深く感謝申し上げます。
臨床試験とは
臨床試験とは、新しい治療法や診断法、予防法などの安全性や有効性を評価するために行われる研究です。現在日常的に行われている治療法や診断法も、臨床試験によって確立されたものです。第I相試験から開始され、優れた方法だけが第Ⅱ相、第Ⅲ相に進むことができます。JCOG2211は第Ⅲ相試験です。第Ⅲ相試験では一般に、数百人の患者さんを対象にして、日常的に行われている方法と新しい方法を比較します。
臨床試験は、厳格な倫理規定の下で行われ、患者さんの安全を最優先に実施されます。試験に参加することで医学の進歩に貢献し、未来の患者さんに恩恵をもたらす可能性があります。
JCOG2211試験の目的
JCOG2211試験は、脊椎転移(背骨の転移)に一度放射線治療を受けた後の患者さんを対象に、最適な2回目の放射線治療(再照射)の方法を明らかにすることを目的としています。
現在日常的に行われている「通常照射」と、有望な新治療である「SBRT※」を比較します。
※ SBRT (Stereotactic body radiotherapy, 体幹部定位放射線治療):いわゆるピンポイント照射を指します。
試験詳細は以下をご確認下さい。
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT1030240172
対象となる患者さん
脊椎転移はしばしば痛みを引き起こしますが、その痛みを軽減する目的で放射線治療(緩和照射)が行われます。緩和照射後も痛みが続いていたり、いったん治まっていた痛みが再び現れたりした場合には再照射が行われます。
この臨床試験は、脊椎転移への放射線治療を受けた後に、同部位の痛みがある患者さんが対象です。
A 群 (通常照射)
通常照射は、十分なマージン(病変の周辺に設けるゆとりの部分)を設けた範囲に、マイルドな線量を投与します(8 Gy/1回)。
治療前の準備期間は1~2日、照射時間は10分程度の負担が小さい治療法です。
この方法が、現状証明されている最良の照射方法になります。
通常照射の詳細は以下になります。
https://www.tmhp.jp/komagome/section/chuo/houshasenchiryou/shikkan/shoujoukanwa.html
B 群 (SBRT)
SBRTは、病変のみに集中的に放射線を照射する方法です。精密な治療計画を設計することにより高い線量を投与します(24 Gy/2回)。
準備期間は1~2週、照射時間は1回30~40分です。
SBRT の詳細は以下になります。
https://www.tmhp.jp/komagome/section/chuo/houshasenchiryou/shikkan/bony_metastases.html
JCOG2211試験の意義
痛みを伴う脊椎転移に対する再照射では、通常照射が標準治療とされています。
本試験は、通常照射と比較して、SBRTが痛みを和らげる効果において優れているかを調べます。
もし本試験でSBRTが勝っていた場合、新たな標準治療が確立されることになります。優れた新治療を未来の患者さんは受けるようになります。
一方で、SBRTが勝っていなかった場合は、通常照射が引き続き標準治療として使用され続けます。通常照射は、患者さんの準備や治療時の負担が少ない放射線治療であるため、この結論もまた未来の患者さんにとって大きな恩恵となります。
つまり、どのような結果が得られたとしても、本試験の医学的な意義は大きいのです。
JCOG2211試験の流れ
臨床試験への参加に同意すると、担当医が臨床試験への登録を行います。
登録後に治療法A・Bのどちらを受けていただくかランダム(五分五分の確率)に決まります。
これをランダム化と言い、治療法の比較において最も有効な方法と考えられています。
登録数と研究期間
予定登録患者数 | |
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期間 | 追跡期間:1 年 解析期間:1 年 |
試験の開始日 | |
試験の終了予定日 |
補償について
臨床試験で行う治療は、通常の診療の範囲内で行われ、保険診療で受けることができます。自己負担額が一定の上限を超えると、高額療養費制度も利用が可能です。
お見舞い金や各種手当てといった特別な経済的な補償は準備しておりません。
研究代表者 中村 直樹
聖マリアンナ医科大学 放射線医学 放射線治療分野 主任教授
研究事務局 伊藤 慶
がん・感染症センター都立駒込病院 放射線科治療部 医員
医学物理研究事務局 中島 祐二朗
駒澤大学 医療健康科学部 診療放射線技術科学科 講師
がん・感染症センター都立駒込病院 放射線科治療部 医学物理士